クレイグラウンドの設計において、避けて通れないのが『水はけ』と『砂ぼこり』の問題です。どんなに優れたレイアウトでも、降雨の後はぬかるみ、強風が吹けば砂ぼこりが舞うようでは、施主や利用者の満足度は得られません。
設計担当者として、これらの課題にどう対応するかが腕の見せ所です。この記事では、グラウンドの水はけ・砂ぼこり問題を効果的に解決する、注目の最新工法を3つ厳選してご紹介します。それぞれの特徴と選び方のポイントを押さえ、設計提案の引き出しを増やしましょう。
目次
グラウンド設計を悩ませる「水はけ」「砂ぼこり」はなぜ対策が不可欠か?
グラウンドの設計に携わる際、「水はけ」と「砂ぼこり」は、ほぼ必ずと言っていいほど直面する課題です。
これらは単なる使い勝手の問題ではなく、グラウンドの品質、安全性、そして価値そのものに関わる重要な要素であり、設計段階での対策が不可欠と言えます。では、なぜこれらの対策がそれほどまでに重要なのでしょうか。
利用者の安全と快適性を左右する
まず最も重要なのは、利用者の安全と快適性への影響です。水はけの悪いグラウンドは、雨が降るとすぐにぬかるみ、滑って転倒するリスクを高めます。泥だらけになる不快感はもちろん、衛生面での懸念もあります。
一方、乾燥して砂ぼこりが舞うグラウンドは、利用者の目や呼吸器に悪影響を与え、スポーツや活動への集中を妨げる原因にもなります。利用者が安全かつ快適に過ごせる環境を提供することは、グラウンド設計の基本中の基本です。
施設の稼働率と評判に直結する
グラウンドのコンディションは、施設の稼働率にも大きく影響します。例えば、雨が降るたびに何日も使えないような水はけの悪いグラウンドでは、予定されていた試合や練習、学校の授業などが中止・延期となり、利用機会が大幅に制限されてしまいます。
これは施設の利用者満足度を低下させるだけでなく、特に有料施設などでは収益にも影響を与えかねません。劣悪なコンディションは施設の評判を落とし、長期的に見て利用者離れにつながる可能性もあるのです。
維持管理の手間とコストを削減するために
水はけや砂ぼこりの問題は、施設の維持管理者にとっても大きな負担となります。水たまりができれば、その都度、水抜き作業や土の補充が必要になるかもしれません。砂ぼこりがひどければ、グラウンド自体の整備だけでなく、周辺施設への清掃にも手間がかかります。
これらの維持管理には、時間だけでなく人件費や材料費といったコストが発生します。設計段階で適切な対策を講じておくことは、将来にわたる維持管理の手間とコストを削減し、施設のライフサイクルコストを最適化するためにも極めて重要です。
これらの理由から、グラウンド設計において「水はけ」と「砂ぼこり」への対策は、単なる付加機能ではなく、施設の基本的な性能と価値を決定づける必須要件として、計画の初期段階から真剣に取り組むべき課題なのです。
解決策1:土壌改良で根本から変える「ヘルシークレー工法」
グラウンドの水はけや砂ぼこりといった課題を解決するための最初の選択肢として、「ヘルシークレー工法」をご紹介します。これは、グラウンドの土そのものの性質を改善することで、問題を根本から解決しようとする土壌改良技術です。
土を「団粒化」する技術で水はけと保水性を両立
ヘルシークレー工法の最大の特徴は、土を「団粒化」させる点にあります。特殊な土壌団粒化資材を用いて、現地の土や新たに入れる購入土の微細な粒子をくっつけ、小さな塊(団粒)がたくさんある状態を作り出します。
この団粒構造になると、まず団粒同士の間に大きな隙間ができるため、雨水がスムーズに地中へ浸透し、水はけが劇的に改善されます。
それに加え、団粒の内部には適度な水分を保持する小さな隙間もできます。このため、土がカラカラに乾きにくくなり、適度な湿り気を保つことができるのです。つまり、「水はけが良い」ことと「適度な保水力を持つ」ことの両立が可能になります。
ヘルシークレー工法がもたらす5のメリット
団粒化技術により、ヘルシークレー工法は多くのメリットをもたらします。
- 雨上がりでもぬかるみや水たまりができにくい
- 砂ぼこりの飛散を防ぐ
- 夏場の急激な表面温度の上昇を抑える
- 現地の土を再利用してコスト削減と環境負荷軽減
- 暗渠排水設備等の目詰まりが起きにくい
解決策2:表面処理施工でピタッと砂ぼこりを抑える「ヘルシーグリーン工法」
グラウンドの課題解決には、土壌改良だけでなく、「表面処理施工」で対応するというアプローチもあります。その代表的な工法が、ここでご紹介する「ヘルシーグリーン工法」です。特に砂ぼこり対策に強みを発揮します。
天然石由来の表層材で地面をカバー
ヘルシーグリーン工法は、天然石(輝緑岩)を粉砕・洗浄して粒度を調整した、100%自然素材の特殊な砂(表層材)を使用します。
この表層材を、既存のグラウンドの表面に均一(平均1㎝)に敷設し、HCソイルアジャストを散布し、転圧するという非常にシンプルな施工方法が特徴です。大掛かりな掘削や土の入れ替えは必要ありません。
ヘルシーグリーン工法がもたらす5つのメリット
この工法には、設計者にとっても魅力的な多くのメリットがあります。
- 表層材が土埃や砂ぼこりの飛散を抑える
- 素材のクッション性で転倒時のケガのリスクを軽減
- 既存グラウンドに施工でき、工期が短く低コスト
- 雨や霜に強く、天候による影響が少ない
- 維持管理が散水やローラー掛け程度で簡単
解決策3:合わせ技で効果が発揮・持続する「笑土(わらど)工法」
これまで、表層工の土壌改良「ヘルシークレー工法」と表面処理工の「ヘルシーグリーン工法」をご紹介しました。最後に紹介するのは、この2つの工法を組み合わせた、いわば「合わせ技」とも言えるハイブリッド工法、「笑土(わらど)工法」です。より高いレベルの機能性と効果の持続性を求める場合の選択肢となります。
ヘルシークレー(土壌改良)+ヘルシーグリーン(表面保護)のハイブリッド
笑土(わらど)工法は、まずヘルシークレー工法によってグラウンドの土壌そのものを改良し、基本的な水はけや保水性を高めます。その上で、表面をヘルシーグリーン工法の表層材で覆い、保護する、という二段構えの構造になっています。
土壌改良と表面保護の両方を行うことで、それぞれの工法のメリットを最大限に引き出し、効果をより高め、長持ちさせることを目的としています。
笑土(わらど)工法がもたらす5つのメリット
この組み合わせにより、笑土(わらど)工法は以下のような優れたメリットを発揮します。
- ヘルシークレーとヘルシーグリーンの組み合わせで水はけ、保水力、防塵効果、クッション性を実現
- 複数の課題に高いレベルで対応可能
- ヘルシーグリーン層がヘルシークレー層を保護し、効果の持続性や耐久性を向上
- 長期間の土壌改良効果とグラウンド全体の耐久性向上
- メンテナンスが簡単で効率的
適切な工法選びで、価値あるグラウンド整備計画設計を
この記事では、グラウンド設計における二大課題である「水はけ」と「砂ぼこり」の問題に焦点を当て、その対策がなぜ不可欠なのか、そして具体的な解決策となる最新の工法3選をご紹介してきました。
クレイグラウンドのコンディションは、利用者の安全・快適性、施設の稼働率や評判、さらには維持管理のコストまで、多岐にわたって影響を及ぼします。設計段階でこれらの課題にしっかりと向き合い、適切な対策を講じることが、グラウンドの価値を最大化する上で非常に重要です。
幸いなことに、これらの課題に対しては有効な技術が存在します。
- 土壌そのものを改良し、水はけと透水性と保水性のバランスを整える「ヘルシークレー工法」
- 表面を天然石由来の素材で覆い、砂ぼこりを抑え安全性を高める「ヘルシーグリーン工法」
- そして、両者を組み合わせることで高い機能性と耐久性を実現する「わら土(笑土)工法」
これらの工法は、それぞれに特徴とメリットがあり、どのようなグラウンドにも万能な唯一の正解があるわけではありません。重要なのは、設計対象となるグラウンドの現状、利用目的、立地条件、そしてクライアントの要望や予算などを総合的に考慮し、それぞれのケースに最も適した工法を選択・提案することです。
今回ご紹介した工法の知識は、設計者であるあなたの提案の幅を広げ、より具体的で説得力のあるソリューションを提供する一助となるはずです。ぜひ、これらの情報を活用し、利用者にとっても管理者にとっても価値の高い、素晴らしいグラウンド設計を実現してください。
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