子どもから高齢者まで、誰もが安心して集える公園。その価値を高める鍵の一つが、足元の『土舗装』にあります。
この記事では、利用者の安全・快適性を第一に考えた公園設計において、土舗装が果たすべき役割と、それを実現するための具体的な工法(ヘルシークレー工法、ヘルシーグリーン工法、笑土工法)を紹介します。それぞれの特徴とメリットを理解し、プロジェクトに最適な工法を選ぶためのポイントを押さえることで、より質の高い公園設計が可能になります。
目次
公園の土舗装に求められる性能とは?「最適解」を考える視点
公園の土舗装計画において、「これが唯一絶対の正解」というものはありません。公園の規模、立地、利用目的、そして主な利用者層など、様々な条件によって「最適解」は変わってきます。
採用担当者、設計者として適切な判断を下すためには、まず公園の土舗装にどのような性能が求められるのか、その評価軸をしっかりと理解しておくことが重要です。ここでは、主な5つの視点から見ていきましょう。
転んでも安心?滑りにくい?
公園には、走り回る子どもから散歩を楽しむ高齢者まで、多様な人々が訪れます。そのため、舗装の安全性は最も基本的な要求性能です。
万が一転倒した際の衝撃を和らげる適度なクッション性(衝撃吸収性)や、雨の日でも滑りにくい表面(防滑性)は、利用者が安心して過ごせる環境の基盤となります。特に遊具周りや園路などでは、高い安全性が求められます。
歩きやすい?暑くない?
舗装の快適性は、公園の居心地の良さに直結します。歩行時の足への負担が少なく、ベビーカーや車椅子でもスムーズに移動できるか(歩行感)は重要です。
また、夏場の強い日差しによる照り返しの眩しさや、舗装面自体の温度上昇は、利用者の不快指数を高めます。照り返しを抑え、表面温度の上昇を緩和できる舗装は、快適な公園環境に不可欠です。
雨の日は?風の日は?
天候に左右されずに利用できるかどうかも、公園の価値を決める重要な機能です。雨が降っても水たまりができにくく、ぬかるまない高い透水性は、雨上がりの利用を可能にし、稼働率を高めます。
また、乾燥した日に風で砂ぼこりが舞い上がらない防塵性は、利用者の健康を守り、周辺環境への配慮にもつながります。
管理しやすい?長持ちする?
舗装は設置して終わりではありません。長期的に良好な状態を保つためには、維持管理のしやすさ(清掃、部分補修、雑草対策など)が重要になります。
また、舗装自体の耐久性が高ければ、頻繁な改修工事の必要がなくなり、ライフサイクルコストを低減できます。設計段階で、将来的なメンテナンスの手間やコストまで見据えた選択が求められます。
自然と調和する?環境負荷は?
公園は、都市における貴重な緑の空間であり、自然環境や周辺景観との調和も重要な要素です。土や自然石のような自然な風合いを持つ舗装は、景観に馴染みやすく、安らぎを与えます。
また、透水性舗装による雨水浸透は地下水涵養に貢献し、保水性舗装はヒートアイランド現象の緩和にも繋がります。リサイクル材の利用など、環境負荷低減への配慮も、現代の公園設計では欠かせない視点です。
これらの「安全性」「快適性」「機能性」「持続性」「環境・景観性」といった複数の視点から、それぞれの公園の特性や目的に合わせて、どの性能を重視するのか、バランスをどう取るのかを考えることが、最適な土舗装、すなわち「最適解」を見つけるための第一歩となります。
選択肢1:土の良さを活かし機能性を高める「ヘルシークレー工法」
公園の土舗装に求められる様々な性能に応える選択肢として、まず「ヘルシークレー工法」が挙げられます。これは、土が持つ自然な風合いや良さを活かしながら、課題となる機能面を土壌改良技術によって向上させるアプローチです。
団粒化技術で水はけと保水性をバランス良く実現
ヘルシークレー工法の核となるのは、土を「団粒化」させる技術です。特殊な資材を用いて、公園にもともとある土や自然の砂を改良し、土の粒子が適度に結合した団粒構造を作り出します。
この構造により、雨水がスムーズに浸透する「水はけの良さ」と、土が適度な水分を保つ「保水力」が両立します。これにより、雨上がりでもぬかるみにくく、乾燥しすぎによる砂ぼこりも抑えられ、さらに保水した水分が蒸発する際の気化熱で夏場の表面温度上昇も緩和されるなど、公園の環境を快適に保つ効果が期待できます。
ヘルシークレー工法を採用する5つのメリット
公園にヘルシークレー工法を採用するメリットは多岐にわたります。
- 水はけが良く、転倒リスクや泥汚れを軽減し、快適な環境を提供
- 砂ぼこりを抑え、目や喉への刺激を減らす
- 夏場の暑さを和らげる効果があり、心地よい空間を作る
- 自然な風合いを活かし、景観や緑との調和を実現
- 土の入れ替えが(基本)不要で、工期短縮とコスト削減が可能
土の持つ温かみや自然な景観を大切にしながら、安全性や快適性、機能性を高めたい。ヘルシークレー工法は、そうしたニーズに応える有力な選択肢となるでしょう。
選択肢2:表面保護で安全性と快適性を向上「ヘルシーグリーン工法」
次にご紹介するのは、公園の地面の「表面」を保護・改善することで、安全性や快適性を高める「ヘルシーグリーン工法」です。土壌改良とは異なるアプローチで、特に砂ぼこりの抑制や利用者の安全確保に効果を発揮します。
天然石表層材によるカバーリング
ヘルシーグリーン工法では、特殊加工された天然石(輝緑岩)由来の表層材を使用します。これは、細かく砕いた天然石を洗浄し、砂ぼこりの原因となる微粒子を取り除いて粒度を揃えた、100%自然素材の舗装材です。
施工は、既存の土舗装面や、ヘルシークレー工法などで改良された土壌の上に、この表層材を敷き均し、HCソイルアジャストを散布して定着させるという比較的シンプルな方法で行われます。
ヘルシーグリーン工法を採用する5つのメリット
公園にヘルシーグリーン工法を採用することで、以下のようなメリットが期待できます。
- 適度なクッション性で転倒時の衝撃を緩和し、安全性を向上
- 砂ぼこりを抑え、快適な公園利用を可能に
- 雨後も早く乾き、透水性と利用性が高い
- 自然素材使用で環境に優しく、景観とも調和
- 簡単な施工とメンテナンスで手間とコストを削減
表面からのアプローチで、公園の安全性と快適性を効果的に高める。それがヘルシーグリーン工法の大きな魅力です。
選択肢3:高機能と高耐久を両立する「笑土(わらど)工法」
公園の土舗装における課題解決の選択肢として、最後に「笑土(わらど)工法」をご紹介します。
これは、土壌改良の「ヘルシークレー工法」と表面保護の「ヘルシーグリーン工法」の長所を組み合わせたハイブリッド工法であり、より高い機能性と効果の持続性(高耐久)を両立させたい場合に最適な選択肢となり得ます。
土壌改良+表面保護のハイブリッド構造
笑土(わらど)工法の構造は、文字通り2つの工法の組み合わせです。まず下層でヘルシークレー工法により土壌そのものを改良し、優れた水はけと適度な保水力を持たせます。その上に、ヘルシーグリーン工法の天然石表層材を敷設し、表面を保護します。
この二層構造により、土壌改良による根本的な機能改善と、表層材による直接的な保護・機能付加が同時に実現されます。それぞれの工法のメリットを相乗的に高めることを目指した構造です。
状況に応じた「最適解」を選び、価値ある公園空間を創造する
公園設計における土舗装の「最適解」を探る旅、いかがでしたでしょうか。本記事では、土舗装に求められる様々な性能から、具体的な課題解決の選択肢となる3つの工法(ヘルシークレー工法、ヘルシーグリーン工法、笑土工法)までを解説してきました。
結論として、公園の土舗装に唯一絶対の「最適解」というものは存在しません。なぜなら、公園はその場所ごとに特性が異なり、求められる機能も、訪れる人々も、そしてかけられる予算や管理体制も様々だからです。
安全性、快適性、機能性、持続性、環境・景観性といった複数の視点から、何を優先し、どのようにバランスを取るかが、設計者の重要な役割となります。
今回ご紹介した3つの工法は、それぞれ異なるアプローチで公園の土舗装が抱える課題に対応します。
- ヘルシークレー工法は、土の特性を活かしながら性能をバランス良く向上させたい場合に適している
- ヘルシーグリーン工法は、砂ぼこり対策や安全性の強化を手軽に実現したい場合におすすめ
- わら土(笑土)工法は、高い機能性と耐久性を同時に追求したい場合に効果的
これらの工法の特徴を深く理解し、公園の種類、主な利用者層(子ども、高齢者、スポーツ愛好家など)、立地条件、デザインコンセプト、そして予算や維持管理計画といった、プロジェクト固有の条件と照らし合わせながら、状況に応じた「最適解」を選択し、提案していくことが、設計者には求められます。
適切な工法を選ぶことは、単に水はけや砂ぼこりの問題を解決するだけでなく、公園全体の魅力を高め、訪れるすべての人々にとって安全で快適、そして心豊かな時間を過ごせる「価値ある公園空間」を創造することに繋がります。
ぜひ、今回の情報が、皆様のより良い公園設計の一助となれば幸いです。
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