近年、都市部におけるヒートアイランド現象は深刻化し、舗装工事における熱環境対策は、設計・施工上の重要な課題となっています。

施主からの具体的な要求事項として、また施設利用者の安全確保という社会的要請として、その重要度は増すばかりです。
従来、遮熱性塗料や保水性ブロックなどが対策として用いられてきましたが、持続性やコスト、メンテナンス性に課題を残すケースも少なくありません。
本稿では、これらの従来技術とは一線を画す、科学的根拠に基づいた新しい熱中症対策舗装技術「透水性保水型土舗装」について、そのメカニズムと性能を技術的に詳説します。
目次
従来型舗装における熱問題の限界
アスファルトやコンクリートといった従来型の不透水性舗装は、太陽からの赤外線を吸収・蓄熱しやすいという物理的特性を持っています。
日中に蓄えられた熱は夜間になっても放出し続け、周辺の気温が下がりにくいヒートアイランド現象の主因の一つとされています。
これらの素材は、表面に水を保持する能力がほとんどないため、気化熱による冷却効果も期待できません。散水を行っても、その水分は短時間で蒸発・流亡し、持続的な温度抑制には繋がらないのが実情です。
新技術「透水性保水型土舗装」の概要
この課題に対し、弊社が提案する「ヘルシークレー工法」は、全く新しいアプローチを取ります。これは、「現地で発生した土を再利用し、土壌そのものに『透水性』と『保水性』という、本来は相反する機能を高レベルで両立させる」という革新的な土系舗装技術です。
高価な材料を外部から持ち込むのではなく、現場の土を改良材によって高性能な舗装材へと再生させるため、環境負荷とコストを抑制できる点も大きな特徴です。

冷却メカニズムの技術的解説
なぜ、この工法が地表温度を効果的に抑制できるのか。その核心となる技術と物理現象を3つのステップで解説します。
核心技術「土壌の団粒構造化」とは
本工法の技術的根幹は、土壌を「団粒構造」へと変化させる点にあります。これは、土の微細な粒子を、特殊な土壌団粒化資材「HCソイルアジャスト」を用いて結合させ、より大きな粒子の集合体(団粒)を形成させる技術です。
この団粒が立体的な網目状に組み合わさることで、土壌内部に無数の微細な隙間が生まれます。これが、透水性と保水性を両立させるための鍵となります。
「保水」と「気化熱」による温度抑制の物理
団粒構造化した土壌は、団粒と団粒の間に大きな隙間(粗間隙)ができるため、降雨や散水による水は速やかに地中へ「透水」します。これにより、表面に水たまりやぬかるみが発生しません。
一方で、団粒そのものの内部にある小さな隙間(毛管間隙)には、スポンジのように水分が長期間「保水」されます。
気温が上昇し、太陽光によって地表が熱せられると、この保持された水分がゆっくりと蒸発を開始します。水が液体から気体へと変化する際、周囲の熱を大量に奪う「気化熱」の原理により、地表温度の上昇が継続的に抑制されるのです。
実測データによる性能証明
この冷却効果は、実測データによって客観的に証明されています。

上記は室内での簡易的な温度測定比較ですが、通常の土が午前10時に37.3℃に達したのに対し、ヘルシークレー工法で改良した土は30.0℃に留まりました。わずか2時間で7.3℃という顕著な温度差が確認できます。
また、全国各地の施工現場における実証実験では、夏季の晴天日において、従来型の土舗装やアスファルト舗装に比べて地表温度が3~8℃程度低減されることが確認されており、その高い性能が実証されています。
他工法との比較と付加価値
設計・施工の現場で比較検討される他工法に対し、ヘルシークレー工法は複数の優位性を持ちます。
- 遮熱塗料は経年劣化による性能低下や再塗装のコストが課題だが、ヘルシークレー工法は効果の持続性に優れている
- 保水性ブロックはコストが高いが、本工法は現地土を利用するためコストを抑えられる
さらに、熱中症対策以外の付加価値として、以下の点が挙げられます。
- 優れた透水性により、ゲリラ豪雨時の都市型洪水を緩和
- 適度な保水性により、乾燥時の砂埃の飛散を防ぐ
- 適度な弾力が、万が一の転倒時の衝撃を緩和
技術的優位性のまとめと今後の展望
ヘルシークレー工法による「透水性保水型土舗装」は、科学的根拠に基づいた冷却メカニズムにより、舗装面の熱中症リスクを大幅に低減する実用的な技術です。
その効果は熱対策に留まらず、雨水管理、粉塵対策、ライフサイクルコストの削減といった多面的なメリットを提供し、持続可能な社会基盤整備に貢献します。
御社のプロジェクトにおいて、環境性能と安全性を両立させた付加価値の高い提案を実現する一助として、ぜひ本工法をご検討ください。詳細な技術資料や施工仕様書のご請求は、下記よりお問い合わせいただけます。
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