園庭を設計する際、デザインや遊具だけでなく『土』について悩んだ経験はありませんか?
『雨の後はぬかるんで使えない』『風が吹くと砂ぼこりがひどい』といった声は、施主である園からよく聞かれる課題です。実は、園児たちが安全に、そして思い切り遊べる園庭を実現する鍵は、この『土の機能性』にあります。
この記事では分かりやすく、園庭の土がなぜ重要なのか、そしてその機能性をどう高められるのか、具体的な解決策まで解説します。
目次
なぜ園庭設計で「土の機能性」がこれほど重要なのか?
園庭の設計と聞くと、どのような遊具を置くか、どんなレイアウトにするか、といった点にまず目が行きがちかもしれません。もちろん、それらも非常に大切です。
しかし、子どもたちが毎日使う園庭において、見落とされがちながら、実は最も基本的で重要な要素の一つが、足元の「土」の状態、つまり「土の機能性」なのです。
では、なぜ土の機能性がそれほどまでに重要なのでしょうか?理由は大きく分けて、園児たちの「安全性」と「遊び」、そして園を運営する上での「管理面」に深く関わっているからです。
転んでも安心?泥だらけにならない?
子どもたちは園庭で走り回り、時には転んでしまうこともあります。その際、地面が適度な柔らかさを持っていれば衝撃を和らげてくれますが、カチカチに固まった土や、逆に石などが混じった土では、思わぬ怪我につながる可能性があります。
また、水はけの悪い土は、雨の後にいつまでもぬかるみ、滑って転ぶ原因になるだけでなく、泥だらけになることで衛生面での心配も出てきます。
雨上がりでもすぐ遊べる?遊び方は制限されない?
園庭は子どもたちにとって、心身の成長に欠かせない多様な遊びを体験する場です。しかし、雨が降るたびに水たまりができ、何日も使えないような園庭では、子どもたちの貴重な外遊びの機会が奪われてしまいます。
砂ぼこりがひどければ、目や喉への影響が気になり、思い切り走り回ることもできません。土の状態は、子どもたちがどれだけ自由に、そして豊かに遊べるかを直接左右するのです。
掃除やメンテナンスの手間は?
土の状態は、園を運営する先生方の負担にも影響します。ぬかるんだ土は園舎内に持ち込まれやすく、日々の清掃が大変になります。
グラウンドの整備(例えば、水たまりをならしたり、固くなった土をほぐしたり)に時間がかかったり、雑草が生えやすく手入れに追われたりするのも、土の機能性が低いことが原因の場合があります。
施主(園)が設計に期待するポイント
これまで述べた安全性、遊び、管理面の課題は、園庭の整備を発注する施主、つまり保育園や幼稚園が、設計に対して非常に強く改善を期待している部分です。
なぜなら、園庭のコンディションは、保護者からの評判や園児募集にも影響するためです。施主は、見た目のデザインだけでなく、「安全で、いつでも気持ちよく使え、管理しやすい園庭」を求めているのです。
このように、園庭における土の機能性は、単なる地面の問題ではなく、子どもたちの安全、健やかな成長、そして園全体の運営や満足度にまで影響を及ぼす、設計上、非常に重要な要素であると言えるでしょう。
設計者や採用担当者が知っておきたい、園庭でよくある「土」の課題と原因
では、実際の園庭では、具体的にどのような「土」に関する課題が発生しやすいのでしょうか?
ここでは、設計段階で考慮しておきたい代表的な課題と、その主な原因について、ケースごとに分かりやすく解説します。
水はけが悪い(ぬかるみ・水たまり)のはなぜ?
雨が降った後、いつまでも園庭に水たまりが残っていたり、地面がぐちゃぐちゃにぬかるんでいたりするケースです。これは、土の中に雨水がスムーズに浸透していかないために起こります。原因としては、土の粒子が非常に細かかったり(粘土質など)、粒子同士がぎゅっと詰まりすぎて隙間が少なかったりすることが考えられます。
水の通り道が少ない、あるいは塞がれている状態なので、表面に水が溜まってしまうのです。また、長年の使用によって土が踏み固められ、水を通しにくくなっている場合もあります。
砂ぼこりがひどいのはなぜ?
晴れた日に風が吹くと、園庭から砂ぼこりが舞い上がり、園児の健康に影響を及ぼしてしまいます。これは、土の表面が乾燥し、細かな土の粒子が風によって簡単に飛ばされてしまうために起こります。
特に、土自体に水分を保つ力(保水力)が低い場合、表面がすぐにカラカラに乾いてしまい、砂ぼこりが発生しやすくなります。
夏場、地面が熱くなりすぎるのはなぜ?
夏の日差しが強い日、園庭の地面が非常に熱くなり、子どもたちが遊ぶのをためらってしまう、あるいは熱中症のリスクが高まるという問題です。これは、土の保水力と関係があります。土がある程度の水分を保っていれば、その水分が蒸発する際に熱を奪う「気化熱」の効果で、地面の温度上昇がある程度抑えられます。
しかし、保水力の低い土はすぐに乾燥してしまうため、太陽の熱を直接吸収・蓄積しやすく、表面温度が非常に高くなってしまうのです。
固すぎる・柔らかすぎる問題
園庭の土が、用途に対して適切でない硬さであるケースも課題となります。例えば、運動会などで走り回る場所がカチカチに固すぎると、転倒時の衝撃が大きくなり危険です。逆に、遊具の下など、ある程度の安定性が必要な場所が、雨の後などに過度に柔らかくなりすぎると、遊具の利用に支障が出たり、地面がえぐれてしまったりすることもあります。
土の種類(砂が多いか、粘土が多いかなど)や、どの程度締め固められているかによって硬さは変わるため、園庭内の場所や用途に応じた適切な硬さになっていないことが原因です。
これらの課題は、園庭の使い勝手や安全性に直結します。設計段階でこれらの課題が発生する原因を理解しておくことが、効果的な対策を考える上での第一歩となります。
土の質を変える「土壌改良」アプローチ
園庭の土が抱える様々な課題は、「土壌改良」によって解決できます。なぜなら、土壌改良は土そのものの性質を改善し、機能性を高めるアプローチだからです。ここでは、その代表的な技術と考え方を見ていきましょう。
注目されるヘルシークレー工法の「団粒化」技術とは?
「団粒化」という技術によって土の水はけを劇的に改善できます。
具体的には、土の細かい粒子を集めて小さな塊(団粒)にし、その団粒同士の間に効率的な水の通り道となる大きな隙間をたくさん作ります。これにより、雨水は園庭の表面に溜まることなく、素早く地面深くに浸透していきます。
この、土の水はけを効果的に改善する団粒化技術を活用した代表的な工法が、ヘルシークレー工法なのです。
さらに「表面仕上げ」と「組み合わせ」で機能性UP
前の章で紹介したヘルシークレー工法で土壌そのものを改良するだけでも、園庭の機能は大きく向上します。しかし、さらに特定の課題(例えば砂ぼこり)への対策を強化したり、より高いレベルの快適性や安全性を求めたりする場合には、「表面仕上げ」や工法の「組み合わせ」が有効な選択肢となります。
砂ぼこり対策と安全性をさらに強化するヘルシーグリーン工法
まず、砂ぼこり対策と安全性向上に特に効果的なのが「ヘルシーグリーン工法」です。これは、天然石を加工した特殊な表層材でグラウンドの表面を覆う工法です。
具体的には、この天然石素材が土の表面をしっかりとカバーするため、風による砂ぼこりの飛散を強力に防ぎ、適度なクッション性も生まれます。
特に風が強い立地や、より高い安全性が求められる保育園・幼稚園の園庭などに向いていると言えるでしょう。
土壌改良と表面保護を掛け合わせた「笑土(わらど)工法」
さらに高い機能性と耐久性を求める場合には、「わら土(笑土)工法」が最適です。これは、土壌改良(ヘルシークレー工法)と表面保護(ヘルシーグリーン工法)を組み合わせた、いわば最上位のハイブリッド工法だからです。
わら土(笑土)工法は、機能性や耐久性に妥協せず、総合的に高品質な園庭環境を実現したい場合に最も適した選択肢と言えるでしょう。
土の機能性向上で、園児も先生も嬉しい園庭設計を
今回は、園庭設計において見落としがちながら非常に重要な「土の機能性」について、その重要性から具体的な課題、そして解決策となるアプローチまでを見てきました。
園庭の土の状態は、子どもたちの安全な遊びや、園の先生方の日々の管理、そして施主である園の満足度に直結します。水はけが悪くてぬかるんだり、砂ぼこりがひどかったりする園庭は、せっかくの設計も台無しになりかねません。土の機能性を向上させることは、まさに園児にとっても先生にとっても嬉しい、価値ある園庭を実現するための鍵と言えるでしょう。
この記事でご紹介したように、土の課題に対しては有効な解決策があります。
- 基本的な土壌改良で水はけや保水性を改善し、ぬかるみや砂ぼこり、暑さを軽減するには「ヘルシークレー工法」。
- 特に砂ぼこり対策を強化し、表面の安全性を高めたい場合には「ヘルシーグリーン工法」。
- 水はけも砂ぼこり対策も高いレベルで実現し、長期的な効果と耐久性を求めるなら、両者を組み合わせた「わら土(笑土)工法」。
これらの工法は、園庭が抱える具体的な課題に応じて選択・組み合わせることが可能です。設計者としてこれらの選択肢を知っておくことは、施主の多様なニーズに応え、より付加価値の高い提案を行う上で、きっと大きな力になるはずです。
ぜひ、今後の園庭設計において、「土の機能性」という視点を取り入れ、すべての利用者にとってより安全で快適な環境づくりを目指してください。
水たまり・ぬかるみ、土埃・砂ぼこり対策のことなら
「土のスペシャリスト」にご相談ください!
元請・下請工事問わず、誠心誠意対応します

詳しい価格を知りたい方はこちら
図面や各工法資料をお求めの方はこちら
参考価格を知りたい方はこちら
土壌・工法についてのご相談はこちら